夏休みが終わると、中学受験生とその保護者にとって「本番までのカウントダウン」が一気に現実味を帯びてきます。よく相談されるのが、「過去問はいつから始めればいいのか」「志望校対策は何をどの順番でやればいいのか」という2つの質問です。
この2つは実は密接につながっていて、順番を間違えると秋以降の貴重な時間を空回りさせてしまいます。今回は、16年間の指導経験から見えてきた「失敗しない秋以降のスケジュールの組み方」を解説します。
なぜ「秋のスケジュール」がここまで重要なのか
夏休みまでは、多くの塾で「単元学習の総復習」がカリキュラムの中心です。ところが9月以降は、多くの塾のカリキュラムが「志望校対策」「過去問演習」「実戦形式の演習」へと大きく切り替わります。
つまり9月から1月までの約5ヶ月間は、
- 基礎固めの時間ではなく
- 「持っている力を得点力に変換する」時間
だという意識の切り替えが必要です。この切り替えが遅れる家庭ほど、12月になって「まだ基礎が固まっていない」と焦り、過去問演習の質が落ちてしまう傾向があります。
過去問はいつから、どの学校から始めるべきか
過去問演習の順番でよくある誤解が、「まず第一志望校から始める」という考え方です。しかし実際には、偏差値的に余裕のある併願校(第2志望・第3志望以下続く)、から先に始めるのが一般的です。
理由はシンプルで、まだ過去問演習そのものに慣れていない9月の段階で、いきなり最も難しい第一志望校の過去問に取り組むと
- 合格点との差が大きすぎて自信を失う
- 何が原因で解けなかったのか(基礎知識の不足か、時間配分か、問題文の読み違いか)を分析しづらい
という状態に陥りやすいためです。まずは余裕のある学校の過去問で「時間配分」「解答用紙の使い方」「問題を解く順番」といった、過去問演習そのものの型を身につけることが先決です。この土台ができて初めて、第一志望校の過去問演習の効果が最大化されます。
開始時期の目安は9月から。併願校の過去問に9月中から取り組み始め、そこで身につけた解き方の型を、10月以降に第一志望校の過去問へと応用していく、という流れが基本になります。
過去問は「繰り返す」より「原因分析」を優先する
過去問演習というと「同じ年度を2周、3周解く」というやり方をイメージされる方もいますが、基本的にその必要はありません。中学受験の過去問は年度ごとに出題内容が異なるため、同じ年度を繰り返し解くことよりも、できるだけ多くの年度・多くの学校の問題に触れ、その都度「なぜ間違えたのか」を言語化することの方が、得点力への影響が大きいというのが指導現場での実感です。
同じ年度を解き直すとしても、それは12月や1月の直前期に、「本当に弱点が克服できているかを確認するための1回」で十分です。過去に間違えた問題を中心に、時間を計って解き直し、同じ間違いを繰り返していないかをチェックする。それくらいの位置づけで考えておくと、時間配分にも無理が出ません。
秋以降のスケジュールの流れ
大まかな流れとしては、次のようなイメージで進めていくと無理がありません。
9月は、夏の総復習を仕上げつつ、併願校(実力相応校)の過去問に着手する時期です。まだ得点力より、過去問演習の型に慣れることを優先します。
10月に入ったら、志望校別対策授業が本格化するタイミングに合わせて、第一志望校の過去問にも着手します。同時に、併願校の過去問演習も並行して続け、幅広い出題形式に触れておきます。
11月は、第一志望校を中心に、出題傾向に合わせた対策(頻出単元の補強、記述・作図など配点の大きい設問の練習)に時間を割く時期です。併願校についても、まだ手をつけていない年度があれば、この時期までに一通り目を通しておきます。
12月は、これまで解いてきた過去問の中で、間違えた問題を中心に見直す時期です。新しい年度に手を広げるよりも、「なぜそこで失点したのか」を振り返り、同じ失点を繰り返さないための復習に時間を使います。
1月は直前期です。新しい問題に手を出すよりも、これまでの誤答の総復習と、確認のための解き直し(1回)を中心に、心身のコンディションを整えることを優先します。
志望校対策の組み方:優先順位のつけ方
秋以降、時間は限られています。次の優先順位で取り組むことをおすすめしています。
- 頻出単元・頻出形式への対応(例:ある学校で毎年出る図形の回転移動、ある学校で頻出の会話文形式の理科問題など)
- 時間配分と解く順序の型作り(得意分野から解く、記述は最後に回すなど)
- 記述・作図など、配点が大きく差がつきやすい設問の練習
- 併願校特有の出題形式への対応(選択肢形式が多い、記述が少ないなど学校ごとの違い)
特に理科・算数においては「学校ごとの出題傾向」が学力そのもの以上に合否を分けることが少なくありません。過去10年分の出題データを見ると、同じ偏差値帯の学校でも「毎年必ず出る分野」と「ほとんど出ない分野」がはっきり分かれているケースが多く、ここを把握しているかどうかで、同じ勉強時間でも得点への反映効率が大きく変わります。
保護者が気をつけたい3つのこと
1. 「過去問の点数」に一喜一憂しすぎない
特に初めて解く年度の過去問は、まだ形式に慣れていないため、本来の実力より低く出ることが普通です。点数そのものより、「間違えた原因」に注目する姿勢を、保護者自身が持つことが大切です。
2. スケジュールは「詰め込みすぎない」
9月以降は塾の負荷も一気に上がる時期です。ここに家庭学習の予定を詰め込みすぎると、睡眠時間や体調管理にしわ寄せがいきます。「何をやるか」と同じくらい、「何をやらないか」を決めることが、秋以降のスケジュール管理では重要になります。
3. 併願校の決定を先延ばしにしすぎない
過去問演習のスケジュールを組む上で、併願校がいつまでも確定しないと計画が立てられません。9月から併願校の過去問に着手するためにも、遅くとも夏の終わりまでには、第一志望・実力相応・安全校の組み合わせをある程度固めておくことをおすすめします。
まとめ
秋以降の過去問演習で最も大切なのは、「第一志望校から始める」ことではなく、「余裕のある学校から始めて、過去問演習そのものの型を身につけてから、第一志望校に取り組む」という順序です。
また、同じ年度を何度も解き直すことにこだわる必要はありません。多くの年度・多くの学校に触れながら、間違えた原因をその都度言語化していくこと。そして直前期に、弱点が本当に克服できているかを確認するための解き直しを1回はさんでおくこと。この2点を意識するだけで、限られた秋以降の時間の使い方が大きく変わってきます。


