「場合分け」で論理を組み立てる力を鍛える 〜3×3ビンゴで考える〜
難関校の入試では、場合分けが絡む問題が本当によく出ます。私も生徒と一緒に、毎回うんうん唸りながら向き合っています。
正直に言うと、最難関レベルになると、大人が解いても一発でベストな筋道を引けないことがあります。だから小6が四苦八苦するのは当たり前で、すぐに解けなくても落ち込む必要はまったくありません。
今回は難関校志望の子に向けた内容です。テーマは「場合分け」。
場合分けの三原則
場合分けで大事なことは、まず次の二つです。
① 漏れなく
② ダブりなく
全体をきっちり覆いきる。これは大前提です。
そのうえで、本当に差がつくのは三つ目です。
③ なるべく少ない場合に分ける
限られた時間で正確に解ききるには、これが効いてきます。①と②を守りながら、いかに少ない場面数で全体をカバーするか。ここが「場合分けの設計力」だと、私は思っています。
今回は3×3のビンゴというシンプルな題材で、この③を体感してもらいます。
問題:3×3ビンゴ
次のような3×3のマスがあります。あとで使うので、番号をふっておきます。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
このマスに〇を置いて、ビンゴ(縦・横・斜めのいずれか1列がそろうこと)を作ります。そろう列、つまりラインは全部で8本あります。
横:①②③ / ④⑤⑥ / ⑦⑧⑨
縦:①④⑦ / ②⑤⑧ / ③⑥⑨
斜め:①⑤⑨ / ③⑤⑦
そのうえで、次の3問を考えます。
(1) 〇を3個使って、ちょうど1つのビンゴを作る方法は何通り?
(2) 〇を4個使って、ちょうど1つのビンゴを作る方法は何通り?
(3) 〇を5個使って、ちょうど2つのビンゴを作る方法は何通り?
※〇の置き方が違えば、別の方法として数えます。
計算力も公式も、ほとんど要りません。問われているのは「どう分けて考えるか」ただそれだけです。
(1) 3個の〇で1つのビンゴ
ウォーミングアップです。3個の〇でビンゴを作るには、8本のラインのどれか1本を埋めれば終わりです。
横 … 3通り
縦 … 3通り
斜め … 2通り
3+3+2で8通り。これはそのまま、「ラインは全部で8本ある」という確認も兼ねています。この8という数字が、あとで効いてきます。
(2) 4個の〇で1つのビンゴ
少し難しく見えますが、気づけば一瞬です。
(1)の8通り、そのどの状態から始めても、残り6マスのどこに4個目を足しても、2本目のビンゴは絶対にできません。1本そろった状態にあと1個足すだけでは、もう1本(あと2個必要)を完成させられないからです。
つまり、自由に選べるのは「4個目をどこに置くか」だけ。置き場所は6マスあります。
8×6で48通りです。
(3) 5個の〇で「ちょうど2つ」のビンゴ ← 今日の本題
ここで場合分けの出番です。
先に、やりがちな失敗から話します。
(1)→(2)の流れに引っぱられて、「(2)の48通りに、それぞれもう1個足してビンゴを2本にしよう」と考える子がとても多いんです。実際、私の教え子もこの罠にはまり、ずいぶん時間を溶かしたことがありました。
でも、48通りを全部書き出して、一つずつ検証して、さらにダブりまで除く……。これは現実的ではありません。まさに③でつまずいた状態で、方針を立てた時点でもう負けています。
そこで発想を変えます。〇を5個置いて作る「ビンゴ2本」を、ライン2本のセットとしてとらえ直すのです。
カギになるのは、5個という個数です。2本のラインがどう重なるかで、必要な〇の数が変わってきます。
2本がまったく重ならない場合(平行な縦どうし・横どうしなど)は、3+3で6マス。〇は5個しかないので、これは作れません。
2本が1マスを共有する(交わる)場合は、3+3−1で5マス。〇5個でちょうど埋まります。
ということは「ちょうど2本のビンゴ」を作る5個の〇は、交わる2本のラインをそのまま埋めたものに限られます。余った〇を別の場所に置く余地はありません。ここが大きなポイント。
ここまで来れば、数えるものは一つに絞られます。8本のラインから、1マスで交わる2本を選ぶ組み合わせは何通りか。それだけです。
3パターンで全部おさえる
交わる2本のラインは、必ずどこか1マスで交差します。そこで、交差点がどのマスかで分けると、たった3パターンで全体を覆えます。ここが2つ目の大きなポイントです。
マスは性質で3種類に分けられます。
中央(⑤)… 1マス
角(①③⑦⑨)… 4マス
辺の中央(②④⑥⑧)… 4マス
あとは、それぞれのマスを通るラインが何本あるかを数えるだけです。
パターンA:中央⑤で交わる
⑤を通るラインは、④⑤⑥(横)・②⑤⑧(縦)・①⑤⑨(斜)・③⑤⑦(斜)の4本。ここから2本選んで、6通りです。
パターンB:角で交わる
角、たとえば①を通るラインは、①②③(横)・①④⑦(縦)・①⑤⑨(斜)の3本。ここから2本選んで3通り。角は4つあるので、3×4で12通りです。
パターンC:辺の中央で交わる
辺、たとえば②を通るラインは、①②③(横)・②⑤⑧(縦)の2本だけ(辺の中央には斜めが通りません)。ここから2本選んで1通り。辺は4つあるので、1×4で4通りです。
合計すると、6+12+4で22通り。これが答えです。
まとめ:場合分けは才能か、努力か
私の答えは、どちらも、です。
賢い子が(3)を3分で解いても、私は驚きません。ただ、私のように才能の側に恵まれなかった人間でも、トレーニングで確実に伸ばせる力でもあります。
やっていることは、最初から最後まで変わりません。
① 漏れなく
② ダブりなく
③ なるべく少ない場合に分ける
この3つだけです。難しいのは③ですが、(3)で見たように、「何を基準に分けるか」を一段高いところから選び直すだけで、泥沼に見えたものが3パターン22通りに収まります。これが設計力です。
今回のような問題は、答えを出すこと以上に、「どう分けたか」を自分の言葉にする練習に向いています。ノートに方針を書かせる、口頭で説明させる。この二つは、ぜひ試してみてください。「中央・角・辺で分けた」と一言で言えたら、その子はもう③を握っています。
ちなみに私が個別で教えるときは、場合分けの方針が立った段階で、いったん手を止めてもらいます。そして「この方針だと、どれくらい時間がかかりそう?」と本人に見積もらせます。(2)の48通りを一つずつ確かめていく方針なら、ここで「これは終わらないかも」と自分で気づける。気づけたら、このまま進めるか、切り口を変えるかを一緒に確認します。変えたほうがよさそうなら、次はどんな基準で分けるか、考える時間をきちんと取ります。
手を動かす前に、方針をひと呼吸おいて点検する。この一手間があるかどうかで、本番での時間の使い方が大きく変わってきます。 算数の「考える力」は、こういう一問一問の積み重ねで、確実に育っていきます。



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