「山道の問題」を3通りで解く

【速さの問題で差をつける「解法の引き出し」の増やし方 】

中学受験の算数では、一つの問題に対して複数の解法を持っていることが得点力を大きく左右します。とりわけ「速さ」の単元では、問われているものに応じて最適な解き方を選べる生徒ほど、限られた試験時間の中で着実に得点を積み重ねることができます。

今回は、その力が問われる代表例ともいえる「山道の問題」を取り上げます。同じ設定から三通りの問いをご用意しました。一見すると似たような問題に見えますが、問われているものによって最短ルートとなる解法は変わります。この感覚を、ぜひお子様と共有していただければと思います。

問題

A地点からB地点まで行くのに21分、B地点からA地点へ戻るのに19分かかりました。上りは分速60m、下りは分速90mで歩いています。
(1) AC間とBC間の距離の差は何mですか。
(2) AC間は何mですか。
(3) AB間は何mですか。

※途中の頂上をCとします。

いわゆる「山道の問題」です。A地点とB地点の間に頂上Cがあり、行きはA→Cが上りでC→Bが下り、帰りはB→Cが上りでC→Aが下りとなります。

なお(1)〜(3)は、それぞれ独立した問題としてお考えください。順番に積み上げて解くこともできますが、実は問われているものごとに「直接ねらい撃ちできる解法」が存在します。そこに気づけるかどうかが、本問の最大のポイントです。

解説

(1) AC間とBC間の距離の差

上の図のように、DC=BCとなる点DをAC上にとり、補助線DBを引きます。

ここがこの解法の急所です。DC=BCとしたことで、行きと帰りでかかる時間の差は、すべて「AD間」から生まれることになります。Dから先(D→C→B)の区間は、行きも帰りも上りと下りを一度ずつ・同じ距離だけ通るため、所要時間が打ち消し合うからです。

そこで、残るAD間に注目します。上りは分速60m、下りは分速90mで、速さの比は2:3。同じ距離にかかる時間は速さの逆比となるため、上りと下りの時間の比は3:2です。

この時間の差が、行きと帰りの差である 21−19=2分 にあたります。比「3:2」の差にあたる1が2分ですから、上りにかかった時間は6分、下りにかかった時間は4分。したがって、AD間の距離は次のように求まります。

60 × 6 = 360(m)

DC=BCですから、AC間とBC間の距離の差(=AD間)は 360m と求まります。

指導現場より このまま手を進めればAC間やAB間も求められます。しかし毎年多くの生徒を見ていると、この(1)の解法「だけ」で押し通そうとして、かえって遠回りをしてしまうケースが少なくありません。次からは、それぞれの問いに対する「最短の解法」をご紹介します。

(2) AC間の距離

ここで活躍するのが「消去算」です。

AC間もCB間も、上りと下りの速さの比は2:3、つまり同じ距離にかかる時間の比は3:2です。そこで、AC間にかかる時間を①②③(○つき)、CB間にかかる時間を❶❷❸(●つき)で表します。○と●はそれぞれ別の量を表す、という点にご注意ください。

行き(A→B、21分)は「AC間の上り+CB間の下り」、帰り(B→A、19分)は「AC間の下り+CB間の上り」ですから、次の2式が立ちます。

+ ❷ = 21

+ ❸ = 19

この2式を足し引きすると、① = 5 と求まります。AC間を上るのにかかった時間は ③ = 15分 ですから、

60 × 15 = 900(m)

AC間の距離をダイレクトに求めたいときは、この消去算が最もスマートです。

(3) AB間の距離

※上りは赤、下りは青の矢印で表しています。

最後はAB間です。実はこれ、補助線も消去算も必要ありません。「距離が一定」という、速さの基本に立ち返るだけで解けてしまいます。

往復(行き+帰り)を通して考えると、上り坂を歩いた道のりの合計と、下り坂を歩いた道のりの合計は、どちらもちょうどAB間1つ分の距離に等しくなります。同じ距離なので、上りと下りにかかった時間の比は、速さの逆比で3:2です。

往復にかかった時間の合計は 21+19=40分 ですから、上りにかかった時間の合計は次のように求まります。

(21 + 19) × 3/5 = 24(分)

60 × 24 = 1440(m)

いきなりAB間を問われたときは、この解法が最短で正答にたどり着きます。

まとめ

同じ「山道の問題」でも、問われているものによって最適な解法は変わります。

・(1)距離の差 → 補助線(DC=BC)

・(2)AC間  → 消去算

・(3)AB間  → 距離一定(逆比)

解法の引き出しを複数持っておくことで、解くスピードと正確さは大きく変わってきます。一つの解き方を覚えて満足するのではなく、「ほかのやり方はないだろうか」と考える習慣こそが、本番で差を生む力になります。

ぜひ受験生の皆さんにも、楽しみながらさまざまな解法を身につけていってほしいと思います。

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