中学受験の算数においては「知っていれば一瞬、知らなければ手も足も出ない」という問題がいくつか存在します。今回取り上げる「連続する整数の和で表す問題」**は、まさにその代表格です。
2022年には筑波大学附属駒場中学校でも出題されており、難関校を目指すご家庭であれば一度は目にしておきたいテーマといえるでしょう。塾のテキストでも取り扱われる分野ではありますが「解法は聞いたことがあるけれど、いざ自分で解こうとすると手が止まってしまう」というお子さんは少なくありません。
本記事では、単なる解法暗記に終わらせず「なぜその方法で解けるのか」という理屈まで踏み込んで整理します。理屈を理解しているかどうかが、初見の応用問題への対応力を大きく左右するからです。
この単元がなぜ重要なのか
連続する整数の和の問題が難関校で好まれる理由は、単純な計算力ではなく「数の性質を構造的に捉える力」を試せるからです。約数・倍数の理解、奇数と偶数の性質、平均の考え方。これらを組み合わせて初めて答えにたどり着けるため、出題側にとっては受験生の思考の深さを測る格好の題材なのです。
裏を返せば、この問題を習得しておくことは、単に1問正解を積み増すだけでなく、数の性質全般に対する感覚を養うことにもつながります。
解法のカギは「奇数の約数」
結論から言うと、この手の問題を攻略する最大のポイントは、対象となる数の約数のうち、奇数であるものを見つけ出すことです。
なぜ奇数の約数が鍵になるのでしょうか。連続する整数の和は、次のように表すことができます。
個数が奇数個のとき → 真ん中の整数×個数 で表せる(平均が整数になる)
個数が偶数個のとき → 中央の2数の平均(小数)×個数 で表せる
つまり、ある数を「個数×平均」の形に分解したとき、個数が奇数であれば平均は必ず整数になり、そのまま連続する整数の並びを作ることができます。この対応関係があるからこそ、「奇数の約数を探す」という作業が解法の核心になるのです。
それでは、実際に例題で確認していきましょう。
例題①:120を連続する整数の和で表す
まず120の約数を、ペアで整理します。
1×120
2×60
3×40
4×30
5×24
6×20
8×15
10×12
このうち、奇数の約数は 1, 3, 5, 15 の4つです。この4つそれぞれが、連続する整数の和の表し方に対応しています。
3×40 → 3個の連続整数、平均40
40を中心として3つ並べます。
39+40+41=120
5×24 → 5個の連続整数、平均24
22+23+24+25+26=120
15×8 → 15個の連続整数、平均8
1+2+・・・+15=120
1×120 は使えるか
「120を平均とした1個の連続整数」は、そもそも“連続する整数の和”という前提を満たさないため、答えには数えません。
したがって答えは以下の3通りです。
- 39+40+41
- 22+23+24+25+26
- 1+2+・・・+15
ここで覚えておきたい非常に有用な公式があります。
連続する整数の和で表せる通り数 =(奇数の約数の個数)-1
120の場合、奇数の約数は1, 3, 5, 15の4個ですから、4-1=3通り。実際の答えの数と一致しています。この公式を知っているだけで、「答えを何通り求めればよいか」を先に確認してから解き始められるため、検算にも使える強力な武器になります。
例題②:15を連続する整数の和で表す
同じ手順で確認してみましょう。15の約数は次の通りです。
1×15
3×5
奇数の約数は 1, 3, 5, 15 の4つ。先ほどの公式に当てはめると、4-1=3通りの表し方があるはずです。
3×5 → 5個の連続整数、平均3
1+2+3+4+5=15
5×3 → 3個の連続整数、平均5
4+5+6=15
1×15 の扱い方(応用ポイント)
ここが本単元における最大の応用ポイントです。「1を平均とした15個の連続整数」をそのまま書き出すと、
-6, -5, -4, ・・・, 0, 1, ・・・, 6, 7, 8
となり、-6から6までは互いに打ち消し合って消えるため、残るのは7+8=15という結果になります。
別の考え方として、1×15を「2×7.5」と読み替え、平均7.5の2個の連続整数と捉える方法もあります。こちらも同じく7+8=15にたどり着きます。この「マイナスの数まで視野に入れて考える」「小数の平均から偶数個の組を作る」という発想の柔軟さこそ、難関校が求めている思考力といえるでしょう。
したがって答えは以下の3通りです。
1+2+3+4+5
4+5+6
7+8
ご家庭での学習サポートのヒント
この単元を指導する際、保護者の方に意識していただきたいポイントを3つ挙げます。
① 「答えを覚える」のではなく「約数を書き出す」習慣をつける
連続する整数の和の問題は、パターン暗記では通用しません。どんな数が出題されても対応できるよう、約数をペアで整理する作業を毎回丁寧に行う練習を積ませましょう。
② 「奇数の約数の個数-1」の公式は、検算用として使わせる
公式をいきなり丸暗記させるのではなく、まず実際に書き出して確認させ、その後で「この公式で答えの数が合っているか」を検算する使い方をすると、単なる暗記に頼らない理解につながります。
③ 応用パターン(1×nの扱い)にこそ時間をかける
基本の2パターン(奇数個・偶数個の組み合わせ)はすぐに習得できても、「1×n」のような境界的なケースでつまずくお子さんは多いです。ここを丁寧に扱えるかどうかが、初見の応用問題への対応力を分けます。
まとめ
連続する整数の和の問題は、一見複雑に見えても「奇数の約数を探す」というただ一つの原則に集約されます。原則さえ押さえてしまえば、120でも15でも、あるいは他のどんな数が出題されても、同じ手順で確実に解き進めることができます。
筑駒をはじめとする難関校が好んで出題する背景には、単純な計算力ではなく、数の構造を捉える思考力を測りたいという意図があります。だからこそ、答えの丸暗記ではなく「なぜそうなるのか」を親子で確認しながら学習を進めることが、本番での応用力につながっていきます。
ぜひご家庭での学習の際に、今回の解法プロセスを一緒になぞってみてください。



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